自然に優しい(らしい)フレキソ印刷 (1998年5月16日)

私がフレキソ印刷に関わるギョーカイ人として、よく耳にする言葉ながら、その実よく判っていない言葉に「フレキソ印刷は自然に優しい印刷方式」というものがあります。「何でだろう?」と疑問を持ちつつ、過去の経験から推測すると次のような理由になると思われます。

1.
インキが水性であること...印刷インキとはそもそも、何らかの固有の色をもった顔料や染料を、溶剤、樹脂、油、水、アルコールなどに混合し、特定の機能を持たせるために何らかの添加材を加えたものです。フレキソインキは他の印刷方式と異なり、水性のインキです。有機溶剤を使わないので、印刷工程で大気を汚染することが少ないようです。
さらに、最近増えている「UVインキ」や「UVニス」といった、インキの定着に溶剤を使わないインキは、その特性上フレキソ印刷用の版で印刷します。光を当てると固まる(=乾く)インキで、溶剤を使わないことから、自然に優しいインキです。

2.
紙のロスが少ない...理由1;オフセット印刷は、印刷を開始してから色の調子が安定するまでに、しばらく時間がかかります。つまり刷り始めに多量の紙のムダ(やれ紙と言うそうです)が発生します。それに比較するとフレキソ印刷は、刷り始めから色の安定までが短く、紙のムダが出にくいようです。
理由2;通常オフセット印刷(枚葉印刷)に用いる紙は、紙の規格サイズに断裁された長方形のものです。例えばパッケージは印刷時に展開図の状態で印刷されるので、紙の取りの悪いものは、箱として使用する面積と、切り抜いて捨ててしまう面積がかわらないものもあるようです。フレキソ印刷では、不定型サイズの紙に印刷できるので、比較的紙のロスが少ないようです。(あまり理由になって無いかな...)

3.
少々デコボコした紙にも印刷できる...代表例が段ボールです。箱は中の商品を安全に保護する機能が第一で、低級の再生紙を使用することが多く、かつ同じ紙の使用重量で比較すると、板紙よりも段ボールのような構造物(複数枚の紙の貼り合わせ)の方が箱としての強度が高くなります。難点といえば、表面がザラザラデコボコとしていること。フレキソ印刷では、柔らかい凸の版を使うので、箱の強度を落とすことなく、そこそこの印刷ができてしまいます。

4.
必要な箇所だけ版を作れば良い...これも経済性という点で、自然に優しいことになるでしょう。ちょっとした変更や修正(良くある話ですね)の際、グラビア印刷だと、金属のシリンダー1本丸ごと作り直しですが、フレキソだと必要な箇所のみ版を差し換えればすみます。

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